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阿呆者
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阿呆者

著者 車谷長吉
ジャンル 一般書 > 文芸書 > 随筆・エッセイ
発行形態 書籍
発売日 2009/02/20
判型・ページ数 4-6・228ページ
商品コード 9784403210990

価格1,760円(税込)

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内容説明
打算のことを、西欧では計算主義的理性と言う。その意味で「打算的人間」とは、すなわち「近代人」ということである。私は近代人と付き合っているうちに、次第に、もう人間ではいたくないな、と思うようになって来た——文学に命を賭けた「阿呆者」が、この世という「苦の世界」を抉り出す!

昭和三十六年春、私は県立姫路西高等学校の入学試験に落第した。やむなく市立飾磨高等学校に入学したが、呆然自失——。自棄糞になって、以後二年間、播州の山野を駆けめぐった。蝶を殺すことが目的だった。が、三年生の五月、ふとしたことから夏目漱石「こゝろ」を読み、死んだ者が生き返るような清気を得て、以後、学校の図書室で岩波書店版漱石全集を全部読んだ。以来、六十二歳になる今日まで、文学一筋に生きて来た。こういう私の生き方を嘲笑う人がたくさんいた。ことに三十代の八年間、料理場の下働きをしていた時は酷かった。ところが以後、三島由紀夫賞や直木賞を貰うと、人はぺたりと掌を返すのだった。さもさも私を偉い者のように取り扱うのである。これには呆れた。依然として私は阿呆のままである。さんざん苦労を舐めさせた母親に言わせれば、おまはんほど気むずかしい阿呆はおらへんわな、ということになるのであるが。——「阿呆者」より

1 愛別離苦
怨憎会苦
求不得苦
五陰盛苦
   
2 文学の基本
石見紀行
西行
源実朝
一休
もう人間ではいたくないな
萬鐵五郎の美人画
   
3 ある恐怖展
阿呆者
   
4 ある読書体験
夏目漱石「夢十夜」
美人の小説
「史伝 隠国」あとがき
聖者の歌
湯川書房で出してもらった小説や句集
はじめての聞き書き小説
内田百間小論
嘉村礒多の業苦
中島敦「山月記」について
芥川賞と直木賞
   
5 政治について
モモちゃんの行方
無関心・好奇心・おしゃべり
まさかの坂を上って
なりの悪い男
ぽろり
沼津千本浜公園
コロッケ
本郷の坂道
ネオン
日本人と宗教
世捨人
電気
私の駆け出し時代
私の母
父・市郎のこと
お四国巡礼を了えて
でもしか教師
羞恥心のない男
私の好きな一句