内容説明
21世紀は、政治、宗教、経済、文化など、さまざまな場面において価値観が多様化し、併存する時代になるだろうと言われています。人々は、政治において、宗教において、経済において、文化において、さまざまな組織に属し、価値観に属すことになるだろう。そういう多様な生を生きることになるだろう、と。そこでモデルとして浮かび上がってきたのが、中世です。近代が、価値を一元化してゆく過程だったとすれば、中世はそれ以前の世界。近代を超えようとする現在、ひとつのモデルとして、多元的な価値が併存していた時代、中世を参考にしようという考え方が登場してきているわけです。中世文学史の俊英・松岡心平が、中世を生きたさまざまな人々を、ゆかりの地を訪ねながら、その生の核心を浮き彫りにしようとしたのが、本書です。世阿弥、千利休、雪舟、後醍醐天皇など、熱く激しくたくましく生きた人々の軌跡がなまなましく蘇ります。もちろん、彼らの人生は現代と深く呼応しています。本書はまさに中世への旅。現代に残る中世が、文章に、また写真に、見事に捉えられています。