内容説明
縄文は、一万年ものあいだ続いた。しかもどんどん充実していった。自然の一角を切り取って、初めて縄文人が縄文人だけの空間を確保してムラを営むと、じっと自然を観察し、真正面から対象化した。そして自然と対立する一方で、共生の度合いを強めていった。とても個性的で豊かな時代だった。この縄文文化の「豊かさ」に対抗できるのは、トーテムポールを立てたアメリカの北西海岸の先住民くらいだろう。日本列島の歴史のなかだけでなく、人類史のなかでも、注目すべき個性を誇る文化だ。ヨーロッパでは、ケルト文化が再評価されている。ケルトという遠い文化と対話しながら、現代の文化の歪みを見つめようとしている。そのヨーロッパでも、いま縄文が注目されはじめている。1998年のパリの展覧会、今年2001年のロンドンの大英博物館とケンブリッジの展覧会に置かれた縄文土器は食い入るように見つめられた。シンポジウムに参加した私も、次々に質問を浴びせられた。海外の縄文研究はこれまでのアメリカやカナダから、ついにヨーロッパにまで広まりつつある。文明というものを見直すために、また世界史を語るうえで、縄文は欠かすことができないことが世界的に認められつつある。『世界史のなかの縄文』はそのような問題意識を共有して語られている。小林達雄弥生文化研究の第一人者・佐原真と縄文文化研究の第一人者・小林達雄。二人の考古学者が、縄文の世界史的位置づけをめぐって激論を闘わせた!