内容説明
旅に出会う他郷の花は、旅の心に華やぎを与え、深みを加えて、旅の印象を忘れがたいものにしてくれる。花との出会いは、そこに生を得て佇ちつくす存在との出会いなのだ。また折ふしに開く古典の和歌や物語の花々には、物を思い、物を思わせる生命力をもったものが多い。人は花を友として思いを託し、問いかけ、また自ら答を得て、深い慰藉を与えられてきた。そうした花々との長いつき合いのなかで、日本人の花の文化史や、花の民俗も生れてきたのである。――本書あとがきより京都の紅葉、北の大地のライラック、沖縄のハイビスカス、鎌倉の梅と水仙、屋久島の杉、白神山地のブナ――日本中の花と木を巡りながら、名歌への想いを綴った、珠玉の歌文集。カラー図版多数収録。