内容説明
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昔の日本人はどのようにものを考えていたか?気鋭の学者が思想史研究の最新成果をわかりやすく解説。前近代・近代の思想が交錯する豊かな世界へ——。
たとえば、日本人の品格を論じたベストセラー本が、新渡戸稲造の『武士道』にもとづいて武士の精神を讃えているのを目にするとき。あるいは、国政選挙の風景を報じるTV番組で、コメンテイターが、政治とは「まつりごと」で一種のお祭りなのだから、などと語るのを聞いてしまったとき。そんな場合、日本思想史の研究者の多くは、ため息をつくでしょう。 新渡戸の著書の内容に、かつて日本社会に生きていた武士たちの実像と食い違う点が多いことは、研究史のうえでは常識です。「まつりごと」の語義をめぐる、本居宣長『古事記伝』の説明を知っていれば、政治とお祭り騒ぎと、二つの意味をじかに重ねあわせるなど、恥ずかしくて、とてもできません。過去の日本の思想、とくに前近代のそれについては、この手の誤謬もしくは理解不足が、しばしば世間にまかり通っています。(中略)そこで、一般の読者と思想史研究の最前線とを少しでも近づけ、前近代と近代の、さまざまな思想が交錯する、豊かな世界ヘと、多くの人をいざなおうではないか。そういうねらいから、この本を編みました。自分と世界が直面している、さまざまな問題について、西洋やインドのものではなく、日本の思想を参照しながら考えてみたい人。過去の日本に、どんな思想が花ひらいたか、その歴史に関心がある人。子供や外国の人から、日本の文化について問われ、答に窮した人。そんな方々に、読んでいただければと願っています。(苅部 直)
昔の日本人はどのようにものを考えていたか?気鋭の学者が思想史研究の最新成果をわかりやすく解説。前近代・近代の思想が交錯する豊かな世界へ——。
たとえば、日本人の品格を論じたベストセラー本が、新渡戸稲造の『武士道』にもとづいて武士の精神を讃えているのを目にするとき。あるいは、国政選挙の風景を報じるTV番組で、コメンテイターが、政治とは「まつりごと」で一種のお祭りなのだから、などと語るのを聞いてしまったとき。そんな場合、日本思想史の研究者の多くは、ため息をつくでしょう。 新渡戸の著書の内容に、かつて日本社会に生きていた武士たちの実像と食い違う点が多いことは、研究史のうえでは常識です。「まつりごと」の語義をめぐる、本居宣長『古事記伝』の説明を知っていれば、政治とお祭り騒ぎと、二つの意味をじかに重ねあわせるなど、恥ずかしくて、とてもできません。過去の日本の思想、とくに前近代のそれについては、この手の誤謬もしくは理解不足が、しばしば世間にまかり通っています。(中略)そこで、一般の読者と思想史研究の最前線とを少しでも近づけ、前近代と近代の、さまざまな思想が交錯する、豊かな世界ヘと、多くの人をいざなおうではないか。そういうねらいから、この本を編みました。自分と世界が直面している、さまざまな問題について、西洋やインドのものではなく、日本の思想を参照しながら考えてみたい人。過去の日本に、どんな思想が花ひらいたか、その歴史に関心がある人。子供や外国の人から、日本の文化について問われ、答に窮した人。そんな方々に、読んでいただければと願っています。(苅部 直)
まえがき 苅部 直 | |
1 日本思想史のきりくち |
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日本思想史における「神話」 金沢英之 日本人にとって仏教とは何だったか 吉村 均 「神」と「仏」の重層性? 佐藤弘夫 「書物」という名のメディア 高橋章則 教育と政治、教育による政治 中田喜万 西洋から見た「日本」 牧野陽子 ナショナリズムの来歴 苅部 直 |
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2 古代と中世 |
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『古事記』と『日本書紀』の世界像 金沢英之 律令貴族の思想 佐藤勢紀子 「新仏教」と「旧仏教」 佐藤弘夫 「中世神話」の世界 原 克昭 『神皇正統記』の思想世界 新田一郎 中世における「公共圏」 東島 誠 禅が日本に残したもの 伊吹 敦 「公方」の登場と変転 新田一郎 |
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3 戦国から「泰平」の世へ | |
戦国大名と戦国武士の思想 吉原裕一 「天道」から、徳川権力の荘厳装置へ 曽根原 理 徳川時代における「禁裡」と「公方」 曽根原 理 近世武士の思想 吉原裕一 朱子学と陽明学 伊東貴之 山崎闇斎学派の世界 清水則夫 儒学と神道の関係 矢崎浩之 新井白石と徳川の政治 中田喜万 中江藤樹と伊藤仁斎の思想 片岡 龍 分水嶺としての荻生徂徠 片岡 龍 徳川時代の歴史思想 高橋章則 朝鮮儒学 井上厚史 |
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4 変転の十九世紀 |
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富永仲基と山片蟠桃 宮川康子 「国学」の誕生 星山京子 民衆世界と平田篤胤 星山京子 水戸学と近代日本 星山京子 明六社の思想家たち 菅原 光 福沢諭吉の波紋 松田宏一郎 明治国家の「建国の父」たち 瀧井一博 明治憲法の思想 瀧井一博 中江兆民の世界 小原 薫 自由民権運動から社会主義へ 小原 薫 民友社と政教社 松田宏一郎 内村鑑三と近代日本のキリスト教 長野美香 岡倉天心とアジア主義 先崎彰容 「国家神道」とは何か 磯前順一 |
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5 二十世紀という時代 |
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近代日本における「植民地」の影 梅森直之 柳田国男のえがいた日本 川田 稔 アナーキズムとマルクシズム 梅森直之 吉野作造と美濃部達吉 平野敬和 大衆文化の可能性 菅野聡美 「世界史の哲学」と「皇国史観」 今井 修 「日本浪曼派」の意味 平野敬和 「大東亜戦争」とは日本思想にとって何だったか 新保祐司 戦後の「近代主義」と「民主主義」 平野敬和 「戦後文学」の思想 川久保 剛 思想問題としての「沖縄」 菅野聡美 |
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【思想史家たちの横顔】 津田左右吉 今井 修 村岡典嗣 新保祐司 和辻哲郎 先崎彰容 小林秀雄 片岡 龍 家永三郎 大川 真 島田虔次 伊東貴之 丸山眞男 苅部 直 |
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【もっと知りたい人のために】 古代 佐藤弘夫 中世 原 克昭 近世 大川 真 明治 菅原 光 大正・昭和 平野敬和 |
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【ブックガイド】 一般 古代 中世 近世 近現代 |
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【コラム】 思想史から見た「映画」 川田 稔 中世の芸能 吉村 均 中国趣味と中国学 伊東貴之 『八犬伝』と歴史意識 井上厚史 西洋音楽はいかに受け容れられたか 東島 誠 「保守主義」は存在したのか 川久保 剛 日本の格闘技 新田一郎 |
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あとがき 片岡 龍 執筆者紹介 書名・事項索引 人名索引 |