内容説明
ニーチェの言うニヒリズムはいまこそ世界に当てはまる。 金融危機は貨幣のニヒリズムの全面的な現われにすぎない。 価値の中心を失ったいま、日本を支える思想とは何か? 経済危機をめぐる白熱の激論4篇、論文2篇を収録。
佐伯―いまの日本人はぜんぜんだめじゃないですか。何かのために働いているという感覚がない。
三浦―自分を超えた何かがあり得るという感覚を失った。
佐伯―そうですね。その点においてはまったく一致するけれども、三浦さんがそういうこと言うとは思わなかった。
三浦―何を?
佐伯―自分を超えたものが大事だという。人間は自分を超えたもののために働くのが良いだろうという。
三浦―良いだろうというんじゃないんですよ。そういう形でしか生きられないということが事実としてあるんです。(本書より)
佐伯―いまの日本人はぜんぜんだめじゃないですか。何かのために働いているという感覚がない。
三浦―自分を超えた何かがあり得るという感覚を失った。
佐伯―そうですね。その点においてはまったく一致するけれども、三浦さんがそういうこと言うとは思わなかった。
三浦―何を?
佐伯―自分を超えたものが大事だという。人間は自分を超えたもののために働くのが良いだろうという。
三浦―良いだろうというんじゃないんですよ。そういう形でしか生きられないということが事実としてあるんです。(本書より)
I |
金融ニヒリズムと「現代の危機」佐伯啓思 |
西洋文明の没落/歴史の終焉から人間の終焉へ/社会の不安定化と「無・意味化」/「神」=「父」=「超越的規範」の崩壊/歴史的必然としてのニヒリズム |
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II | 資本主義はニヒリズムか |
ニヒリズムに抗するエートス/経済学はなぜ金融工学に収斂したか/1980年代のパラダイム・チェンジ/政府も民間企業のひとつになってしまった/資本主義は人間の条件を露わにする/社会のエートスとしての宗教/大地から切り離されているアメリカ/アメリカ新保守主義の背景/ヨーロッパの土着性/日本人のエートスと古代中国/死生観・自然観・歴史観/佐伯啓思、司馬遼太郎を批判する/特攻隊と保田与重郎は日本人のエートスか/天皇制と日本人のエートス/光格天皇と近代/政治の価値はなぜ二束三文になってしまったか/音声文字と超越論的次元/金融ニヒリズムの快楽/自分を超えるものとしての言語 |
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III | 思想の現在をどう捉えるか |
民族自決と民主主義/近代合理主義の自己崩壊/引き伸ばされたニーチェ/ヘーゲルと現代思想/言語論の焦点/ユダヤ的なるもの/科学ニヒリズム/文明は衝突するか/イスラムと現代/反システム運動は可能か/身体と倫理 |
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大衆社会の不安 | |
重商主義の見直し/ニュー・エコノミーの二面性/危機管理の経済政策/経済学者の責任/祭りと政治/近代化の逆説/無意味化する世界/小泉政権の本質/1930年代との類似/新しい歴史教科書は必要か?/国家の役割/大地、型、家/民衆の責任 |
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アメリカニズムを超えて | |
民主主義と自由主義は対立する/新保守主義とネオコン/アメリカの世界戦略の転換/貴族制の再評価/サロン外交と内輪外交/WASPの解体/イスラムをどう見るか/「アメリカ帝国」の不可能性/マクドナルド化がもたらすもの/〈帝国〉をどう評価するか/アメリカ文明とアメリカ文化/知的共同体としてのヨーロッパ/特殊国家アメリカ |
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IV | ニヒリズムとしての現代芸術 三浦雅士 |
現代芸術は資本主義のニヒリズムを体現する/芸術の零度としての抽象表現主義/美術館は最初の格付会社である/純粋芸術と金融資本主義/金融ニヒリズムとポストモダン | |
初出について |