内容説明
本書は、哲学者・木田元氏による巻末の「解説」にもくわしく説明されていますが、ナチス主義者の大哲学者マルティン・ハイデガー(1889-1976)と、彼のユダヤ人の弟子たちの類似性を探究した画期的な論考であり、ハイデガーの現代思想への巨大な影響力に警鐘を鳴らすものです。ハイデガーの「子どもたち」とウォーリンが呼ぶ、二十世紀最大の政治哲学者ハンナ・アーレント(1906-75)、戦後ドイツの指導的な哲学者カール・レーヴィット(1897-1973)、ドイツを代表する環境倫理学者ハンス・ヨーナス(1903-93)、そして新左翼の知的予言者として一時代を領導したヘルベルト・マルクーゼ(1898-1979)という四人のユダヤ人が、いずれも青年期にハイデガーのもとで、その強烈な影響を受けながら学んだあと、ナチス政権成立後の一九三〇年代には、アメリカへ、日本へ、エルサレムへと世界中に散って亡命生活を送り、その過程でそれぞれに自立した思想家に成長。戦後、彼らはナチスに加担したかつての師に厳しい批判をくわえることになるのですが、しかしその批判のうちにもハイデガーの強烈な影響の跡がうかがわれるという皮肉な事態になる……。「ハイデガーにであれ、その子どもたちにであれ関心をおもちの方はぜひお読みになるといい。愛憎もたっぷりからんだ、めったに見られない華麗な思想のドラマを楽しむことができる」(木田元「解説」より)一冊です。